私とテニス ~テニスこわい
ペンネーム 月賀カワル
<<「マイクッキング」から続く>>
娘たちが用意した父の日のプレゼントは、リストバンドとテニスソックスだった。古希を過ぎても、半日テニスコートで走り回っている父親を、娘たちは応援してくれている。しかし、本音では、私はテニスがこわい。半日走り回ってもいっこうに上達しないテニスが、心底こわい。
テニスは私の健康維持に欠かせない。
結婚して周りを見回すと、そこにテニスコートがあった。週末ともなれば、社宅とその近郊から人が集まり、殺気立ってボールを打ち合っている。コートの横にあるボード打ちでは、板をぶち抜こうと気合を込めたストロークを打ち込んでいる。その真摯な姿に圧倒されながらも、家内のラケット(フタバのクリスエバートモデルだった)を借りて、こそこそと目立たぬように板打ちに向かった。
以来40年強の時を経て、私のテニスは「超へたくそ」のままである。
ダブルスを組むと、
パートナーの足を引っ張りまくる。ふらふらとネット際に上がったボールを勢い込んでスマッシュ、空振り! パートナーが天を仰ぎ、ラケットを放り投げる。挙句の果てに、「敵が3人いた」といわれる始末である。
先日、あまりの不甲斐なさにあきれ返ったパートナー氏から、優しい一言 「結婚してテニスを始めたのなら、途中テニスから離れた時期が長かったのかね」 いえいえ、どういたしまして。東京在勤時代も単身赴任時代も、週末のテニスは欠かさず続け、テニススクールにも通った。
それでも、私のテニスは「超へたくそ」のままである。
とにもかくにもまずはストローク、
これが安定しないことにはテニスにならない。そこで、テニスボールの弾道を計算してみた。重力加速度にガットの反発係数、空気抵抗とボールの回転、ラケットのスウィング速度、面の傾き、その他もろもろを加味して数値解析したナヴィア・ストークス式の結論は、「腰の高さで力一杯ラケットを水平に振り回せ」だった。この打法を体得できれば、多少面がぶれてもボールはネットを超え、しかも重力と空気抵抗に負けてコート内に落ちる。
しかしとてもそんなセンスと体力はなく、私のテニスは「超へたくそ」のままである。
先日、ある上級者の方から
貴重なアドバイスをいただいた。私のテニスには「ため」がないのだそうな。確かに、行動を起こす前の一呼吸の「ため」は、テニスに限らず私の人生に決定的に欠けていた。大学とその学科も三井の会社も、そして何よりもわが最愛の妻も即断即決の賜物である。ただしこの件については、前のめりに「ため」がなかったことが幸いした。
人に迷惑ばかりをかけているこんなテニス、
やめてしまえばストレスも減り、試合をぶち壊す邪魔者が消えてテニスコートに平和が戻るだろうに。
「超へたくそ」のわたしはテニスがこわい。それでもこわいもの見たさに、今日もラケットを担いでコートに来てしまった。仕方がないから、人の迷惑を顧みずに、「テニスこわい」と食いついてしまおう。
今のわたしにほかにこわいものがあるとすれば、そうだ、
~~あとはアフタ-テニスの「ビールがこわい」~~