中学時代昆虫採集に熱中していた。カミキリムシなどの甲虫類と蝶が主な対象だった。高校に進むと止めてしまったが、採集した昆虫の標本箱と図鑑は大人になるまで保管していた。40歳を過ぎて学生時代にやっていた登山を再開し、高い山中でいろいろな蝶を見掛けるようになった。低地ではモンシロチョウ、モンキチョウ、アゲハチョウが多いが、高度が高くなると珍しい蝶に出会うようになった。山で出会った珍しい蝶を幾つか紹介する。
1. 斑尾・沼の原湿原 ギフチョウ
冬はスキー、夏はジャズフェスティバルで知られる新潟縣の斑尾高原(標高1000m)、ここにある沼の原湿原は5月、6月、ミズバショウ、リュウキンカ、ミツガシラなど花々に彩られる。湿原に伸びる木道を辿って花々を眺め、湿原入り口に戻ってくると、フジザクラ(マメザクラ)に止まっているギフチョウを見つけた。
本州の山に生育する蝶で、中学時代九州で昆虫採集していた時はこの高山蝶に出会うことなど思いもょらなかった。黄白色の翅に黒の太い縦じまが目立っていて一目で分かる。近年里山が荒廃・放棄されて個体数が減少しているそうだ。
2. 奥美濃・能郷白山 アサギマダラ
7月下旬岐阜県にある温見(ぬくみ)峠から奥美濃の名峰・能郷白山(1617m)に登った。峠から尾根道の急登を繰り返して中腹まで上るとキオン、シモツケソウ、ヨツバヒヨドリなどのお花畑に蝶が飛び回っているのを見つけた。翅の中央が白っぽく、前肢の周囲に黒い模様、後翅の下部が赤褐色のアサギマダラだった。日本全国の標高が高い山地に生息し、季節に応じて日本各地を移動して飛び回っていることが翅の白い部分へのマーキングから知られている。
3. 立山 ヒメシジミ
8月上旬黒部立山アルペンルートで立山室堂に上り、みくりが池、雷鳥沢に向って下りている時、草地にヒメシジミが止まっているのを見つけた。翅の表は銀青色、裏は灰色、後翅下部にオレンジ色の帯が特徴的である。北海道、本州の山地に生息することが知られている。アザミ、オオイタドリなどが食草。 食草だけでなく環境が良くないと生息しなくなり、各地で開発が進んで絶滅してきているので保護が計られている。
4. 蝶ケ岳 コムラサキ
上高地から梓川沿いに横尾まで行き、蝶ケ岳に登った。翌早朝、蝶ケ岳ヒュッテ横の展望台に出て日の出を待ったが、雲に隠れて見えなかった。時間と共に霧が晴れ、穂高連峰の上部が姿を現した。
徳沢に向って長塀尾根を下って行くと雪解けの小さな池にチシマキキョウ、ハクサンイチゲ、シナノキンバイなどの花々。紫色にオレンジ色の斑点が付いた美しい翅のコムラサキが止まっているのを見つけた。日本全土に分布し、日本の国蝶・オオムラサキに似ているが、それより少し小型である。