1. 猫のおしっことアンプの故障
私は、学生の頃からステレオに目覚め、以降ステレオシステム作りと音楽観賞の両方を楽しむ趣味を74歳の今でも続けている。音楽のジャンルは、クラシックからモダンジャズや歌謡曲まで至って広い。
現在のステレオシステムは、CDプレーヤーがDENON DCD-1650AZ、コントロールアンプはアキュフェーズC-200V、パワーアンプはONKYO M5000Rである。パワーアンプが下級グレードの機種であるが、それには訳がある。以前のパワーアンプはアキュフェーズのP-300Vであった。
家には数匹の猫がいる。大の猫好きの家内は外猫にも餌を与えており、その中の目ぼしい猫を金正日ばりに拉致して我家に連れ込む悪癖がある。一時期は最多6匹の猫を飼っていた。猫には縄張りを示すためにマーキングをするやつがいて、私がシンガポールに単身赴任している間に、その中の1匹?が大事なアンプ周辺におしっこを何度もかけていた。
帰国したある日、オーディオラックの下段2台のアンプに白い粉が吹いているのを見つけた。乾燥していたので初めは何か分からず、濡れタオルで拭いていた時、ハッ!これはおしっこだと気づいた。その後、ステレオを聴いている際に、ボリュームを回すと、プツプツ雑音が出るようになった。コントロールアンプのボリュームの接点不良と思い、アキュフェーズに修理の電話相談をしたら、その現象はパワーアンプの問題である旨回答があり、往復宅配便でアキュフェーズに送った。
同社より、アンプの中が緑青で錆びついており、修理不可として返送された。即ち、猫のおしっこによる錆が故障原因と判明した。ゆえにパワーアンプを買い替えざるを得ず、後述のJBL-4344を駆動させるだけのパワーがあって安価な、ONKYOのアンプを購入した次第である。猫への怒りには触れないでおく。
2. スピーカーJBL-4344の破損
昨年初め、31年間聴き親しんだフロア型スピーカーJBL-4344のウレタン製コーンエッジ4個が2回目の破損をしたため、買い替えることにした。JBL-4344は、1985年頃から発売されていた4ウェイのスタジオモニターで、重量は1本104㎏、内容積156Lという大型フロア型の、腹に響く大迫力のスピーカーである。
JBLによると、ウレタンエッジはこのスピーカーにとって音質性能上不可欠だそうだ。しかし必ず10数年以内に劣化しボロボロになる。修理費は20万円程度掛かるが、それ以上に、左右合計4個の重いスピーカー(10.1Kg、5.5Kg各2個)を取外し、修理後、逆の手順で元に戻すという作業が、実に大変である。
よってエッジ修理を諦めて、オーディオ引取り専門店に2本14万円で売却した。
3. スピーカー買い替え
後継のスピーカーシステムであるが、市販のスピーカーは、重低音に関しては物足りない。秋葉原で試聴したスピーカーシステム群では、唯一、三菱電機のダイヤトーンDS-4NB70が解像度、音質、全体のバランスが別格で群を抜く素晴らしい音を出していたが、ペアで定価120万円ゆえ諦めた。結局、買い替えたのは、JBL-4312SE(JBL70周年記念スペシャルエディション:買値22万円)で、重低音は42Hz近くまでは出ており、そこそこのバランスの音だとは思うが全体的に物足りなさを感じる。低域の伸びと解像度の良いスピーカーシステムを自作したいという思いに駆られていた。
4. 製作決意とスピーカーユニットの選定
2020年4月より、コロナウイルス感染防止のため不要不急の外出自粛が始まった。そこで家族の後押しもあり、自分が選んだスピーカーユニット(スピーカー単体)に合わせたスピーカーボックスを製作することを決め、ユニットの選定を始めた。インターネットで各種スピーカーユニットの評価の書き込みを見て、PARC Audioのウッドコーンというユニークなスピーカーの、フルレンジで最も大きい13cmスピーカーDCU F-131Wが目に留まった。使用者の評価では、低音がよく出る、解像度が高い、弦楽器の音色が良い、聴き疲れしないなど高評価(フォステクス使用者が多かった)であったため、これに決めた(5月末)。
5. スピーカーボックスの設計・製作
スピーカーボックスの方式は、フロントバスレフ(バスレフレックス)型を採用した。
バスレフはダクトの設計が課題で、インターネットで検索したら「自作スピーカーの設計プログラム⇒ バスレフ型エンクロージャーの設計プログラム」が見つかった。スピーカー各社の主な機種のデータが入っており、スピーカー機種名、箱の内容積、ダクトの希望共振周波数、ダクト開口直径を入力すると、ダクトの長さと周波数特性を自動計算してくれるプログラムで、それを参考にした。ダクトには、塩ビの排水用パイプVU50(内径56.4mm)を使用することとした。
次は、スピーカーボックスの要である板材で、ホームセンターには置いてないため、インターネットで検索し、シナベニヤ板の板厚15、18、21mmで数種の幅×長さ1825mmの板材を取扱う店が見つかった。
内容積40L前後のスピーカーボックスの設計を行い、21mm厚の板材の図面をショップへメールし、指定寸法にカットしてもらった。自分で鋸で真っ直ぐ切ることは不可能なため、大いに助かった。ただし、組立て用内部ステー(パネルを固定する桟)は、端材を自ら鋸で25本カットしなければならず苦労した。
スピーカーとダクトの取付け穴開け加工は、インターネットで木工用サークルカッターを購入し、電気ドリルで綺麗に丸穴開け加工をすることができた。
天板・底板と左右側板に木工ボンドでステーを接着し、木ネジで固定した。乾燥後、天板・底板・側板を接着し、前面パネルをステーに接着した。後面パネルはネジ留めするため、組立ては一応終了した。
 |
写真1 組立途中のスピーカーボックス |
音響的仕上げは、各パネルの内部再生音との共鳴(箱鳴り)を防止するため、ブチルゴム・アルミ2層の制振材を、組立前に各内面に貼り付けた。組立後、内部吸音用ミクロングラスウールを両面テープで貼り付けた。ダクト長は、音圧とダンピングを考慮して共振周波数を28Hzとし、最終的に18cmにした。
スピーカーボックス外面を水性ウレタン塗料(マホガニー色)で3度塗りした。後面パネルを木ネジで固定し、最後にスピーカーを前面パネルに取付け、全作業を完了した。
スピーカーボックスの仕様は、外寸:W342×H450×D380mmで、内容積は41.37L、内部ステーと制振材及び吸音材の容積を差引くと、実容積は36.7L。13cmスピーカーにしては相当大きい(推奨の2.4倍)。
 |
写真2 自作スピーカー(左用) |
6. 感想
試聴の結果、高級スピーカーでもなかなか再生できない超低域(40Hz以下)を純音で再生しており、誠に頼もしい。木目コーンも美しく、ずんぐりむっくりの容姿がユニークで親しみを持てる。
製作実費は7万円、生涯最大のDIYであり、重低音と達成感で大いに満足している。
 |
写真3 自作スピーカーとJBL-4312SE 下の針束は猫除け対策 |