I.中国人の今日この頃
1.すれ違う両国民の思い(2018年1月10日掲載)
2.中国との印象的な出会い(1月26日掲載)
3.住宅事情あれこれ (3月9日掲載)
4.お国変わればやり方、考え方も違う(5月 8日掲載)
5.ある水墨画家との出会い(6月22日掲載)
6.魅力あふれる観光地と歴史的遺産(8月24日掲載)
II.政治と経済のあれこれ
1. この国の思いと指導者の思いと(11月27日掲載)
2. この国はどこへ向かうのか(2019年2月8日掲載)
3. 経済成長の新エンジンは創業・起業スピリット(4月9日掲載)
4. 世界で存在感を増す中国人(11月26日掲載)
5. 影を潜めて来た物価安と消費者の動き(2020年3月17日掲載)
6. コロナ禍を転じて友好推進を
これまで11回にわたって中国のこの頃の動きを、庶民の日常生活、政治、経済などに関し述べてきました。しかし、この歴史ある巨大な国を正確に語ることは殆ど不可能です。本来なら最終回として、日中友好の現況と将来展望で締め括るつもりでした。しかし武漢発の新型コロナウィルス問題が暴発して世界観が一変したとも言えます。すなわちコロナ後の世界が果たして何処に向かうか、そして日中関係にどんな影響を及ぼすかです。
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写真1.南京の地下鉄駅で体温検査する乗客 |
コロナ問題発生前は、日中関係はさしたる大きな問題もなく、改善基調にありました。訪日中国人旅行者数が昨年は一千万人近くに達したり、本年春には習近平主席が初めて訪日計画を決めたりして友好ムードは高まっていました。しかし、このコロナ問題突発は、世界中に甚大な被害をもたらしました。
先ず一番大きいのは、改善しかけていた米中関係が冷戦時代を超える最悪の状態に陥りつつあることです。米国は新型コロナウィルスを世界にばらまいたのは中国の責任だと主張し、米国を初め世界でウィルスが急速に拡大している中で中国は完全に封じ込めたと言う意味から、世界に貢献していると主張しています。しかし世界の世論としては、中国への批判は強いですが。
第二の影響は、コロナ問題によって人の移動とコミュニケーションが極めて困難になったことです。またモノの移動にも支障を来す状況です。このことは国内的にはテレワークやオンライン授業を生む良い面もありますが、国際的には自国第一主義や反グローバル化の動きを生み、今までの流れの逆流が始まっています。生産面ではサプライチェーンの見直しで自国回帰し自国完結型の生産体系の検討も始まっています。
第三に、世界のあらゆる国際協調体制が不安定化しつつあります。その最たるものはWHOをめぐる米中の対立です。米国は既にWHO脱退を表明しています。これは国連の活動にもやがて影響を与えかねません。今回のウィルスは国境を越え、あっと言う間に世界で感染者数が7月中旬で1300万人を超してしまいました。 世界の協調なくしてこの問題の解決はありません。ある意味でウィルスを含めた自然界が行き過ぎた人類文明へ警鐘を鳴らしているとも言えます。世界が非協調への流れで懸念されるのが、米中の対立が激化しつつあり和解には相当な時間を要する構造的問題に発展していることです。このことは政治的、地政学的そして経済的に世界にもたらすインパクトは測り知れません。
ポストコロナの時代は、米中対立が持続する環境下で欧米圏VS中国圏という二大政治・経済圏という構造が定着することが予想されます。そこで日本の立ち位置を何処に置くか、日本のリーダーの卓越した洞察力と指導力が問われるところです。今までの対米依存一辺倒の政策では立ち行かないでしょう。恐らく日本の選択肢は、この二大政治・経済圏のどちらに所属するかと言った単純な問題ではないでしょう。今回のコロナ問題はグローバル化が過剰に進展した状況の修正を迫っている面もあり、国内回帰の動きも出ていますがこれは日本の主たる選択肢ではないでしょう。
今こそ日本は再度“ルックイースト”を政治・経済政策の基本に据えて、アジアのリーダーとして連帯を再強化する好機でしょう。そう言う流れの中で、日中関係を新しい価値観で見つめなおす時期でしょう。他方中国は、曽ての“韬光养晦(力を付けるまでは目立つな)”政策から転じて、今や世界で軍事を含む強引なまでの対外攻勢が目立ちます。特に、コロナ発生以降対米はもとより、台湾、香港、インド、東&南シナ海などで世界との軋轢を強めています。中国は一番恐れる孤立が深まっていることを認識すべきでしょう。
日中関係は好転と悪化を繰り返した75年の歴史でしたが、今こそ孤立しないため中国は政治・経済面から日本を必要としています。勿論日本にとって中国を含むアジアはあらゆる面で重要な同朋です。日本は中国の覇権主義的動きをけん制しつつ、共にアジアのリーダーとして共に協力し発展に尽くしていくことが重要です。安定的な日中関係には、官民を通じた持続的で後戻りのできない友好関係の構築が必須です。特に持続的民間交流こそ不可欠です。今回のコロナ問題が、日中の友好関係を一段と発展させる切っ掛けになることを祈ります。
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写真2.日中首脳は真の友好関係の推進を |