I.中国人の今日この頃
1.すれ違う両国民の思い(1月10日掲載)
2.中国との印象的な出会い(1月26日掲載)
3.住宅事情あれこれ (3月9日掲載)
4.お国変わればやり方、考え方も違う(5月 8日掲載)
5.ある水墨画家との出会い(6月22日掲載)
6.魅力あふれる観光地と歴史的遺産(8月24日掲載)
II.政治と経済のあれこれ
1. この国の思いと指導者の思いと(11月27日掲載)
2. この国はどこへ向かうのか (2月8日掲載)
3. 経済成長の新エンジンは創業・起業スピリット (4月9日掲載)
4. 世界で存在感を増す中国人 (11月26日掲載)
5. 影を潜めて来た物価安と消費者の動き
最近上海の街を歩いていると高級ブランド店や欧米流の飲食店がすごく増えたなと実感します。流石に高級ブランド店には一見の客は入っていないようですが、少しおしゃれな欧米のレストランや珈琲のスタバ―では若者中心に何時も満員状態です。
平均的所得と物価面から見ても相対的に日本よりは高い印象です。例えばスタバ―のコーヒーは日本より4~5割高いですがそれでもここで飲みたがります。一種のファッションなのでしょう。日中物価の一部を比較してみますと表の通りです。
日中価格比較した簡易表
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中国・
円ベース |
日本・円 |
中国/日本% |
タクシー初乗り |
245 |
700 |
35 |
地下鉄・バス初乗 |
53 |
160 |
33 |
卵・10ケ |
290 |
200 |
145 |
スタバ―珈琲 |
470 |
320 |
147 |
マッサージ・1時間 |
2,100 |
5,000 |
42 |
ヒートテック・UQ |
1,730 |
1,000 |
173 |
都心マンション |
6〜7千万 |
4〜5千万 |
140〜150 |
公共の交通機関やマッサージは日本の半値以下です。交通機関は公的支援や規制があるからでしょう。マッサージに関しては高級なところは相当高いですが、一般のは従業員が農村からの出稼ぎ女性が多いため労務費が安く押さえられています。
しかしこれも農村の都市化に伴いドンドン値上がり中です。10年位前は2時間でも千円以下でしたが。我々外国人が買う衣料や食材に関しては、ユニクロや卵に見るように高いと思います。住宅に関しては日本との比較は条件が違うため難しいですが、明らかに3割以上高いと思います。
日本に比べ平均個人所得は低いのに中国の消費者の行動が高級志向なのにはいくつかの要因が考えられます。一つは中国の家庭は共稼ぎがほとんどで可処分所得が多いのに加え消費志向が強いことです。またこのところ中国人には安全・安心・清潔志向が強まっています。
幼児用のオムツや化粧品はメーカーは同じなのにMade in Japanを好みます。同じ日系企業が中国で生産しても信用していません。私の中国の友人の娘さんは子供のオムツは絶対に日本からの輸入品だそうです。日本製の商品への安心・安全神話があるからでしょう。
加えて高くてもファッショナブルであれば迷わず買う傾向が強くなっています。多分中国人の性格として面子を重んじるところも影響しているでしょう。結果、物価が相当上がったため10年位前までは中国でお土産用品を買いましたが、この頃では何もかも驚く位値上がりしてしまっているため、お土産選びに苦労します。
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写真.南京路のブランド店 |
物価の上がった要因には、賃金上昇からコストアップや所得の増加があります。加えて、役人関係や国営企業関係の幹部間で横行していた金品のやり取りや接待です。
つまりこれは賄賂であり腐敗の原点です。これまで何度となく政府関係の高級幹部が摘発されてきましたが根絶やしにはできませんでした。これは千年以上の昔から存在して来た悪しき伝統でもありました。良く言えば賄賂は人間関係の潤滑剤だったかもしれません。
この影響を我々でも感じた例は、この10年程前に比べ白酒(五粮液)は10倍以上値上がりしました。4~5千円であったものが7~8万円になったので軽い気持ちでお土産で買って帰る訳にいきません。高級中華レストランは接待攻勢で大幅値上がりしました。
しかし7年前に習近平氏がトップに立つと、『トラもハエもたたく』と言ったスローガンのもと中央政府高官も含めて腐敗を摘発したため、国民の絶大なる喝采を浴びることになりました。
このため一昨年から始まった第二次習体制で国民の人気の後押しで更なる独裁体制を確立できました。結果として白酒の値段は半値以下になり、高級レストランの経営は倒産も含め苦境に陥ったり、高級ブランドが売れなくなりました。このことはGDPに多少負の影響を与えたでしょうが、過剰評価されていたものが健全化したと言う意味で社会にとって良いことだと庶民は喜んでいるようです。