I.中国人の今日この頃
1.すれ違う両国民の思い(1月10日掲載)
2.中国との印象的な出会い(1月26日掲載)
3.住宅事情あれこれ (3月9日掲載)
4.お国変わればやり方、考え方も違う(5月 8日掲載)
5.ある水墨画家との出会い(6月22日掲載)
6.魅力あふれる観光地と歴史的遺産(8月24日掲載)
II.政治と経済のあれこれ
第一章では中国の庶民生活を中心に書いてきましたが、ここ第二章では少し難しい政治・経済方面を軟らかめにお話してみたいと思います。
1. この国の思いと指導者の思いと(11月27日掲載)
2. この国はどこへ向かうのか (2019年2月8日掲載)
3. 経済成長の新エンジンは創業・起業スピリット (4月9日掲載)
4. 世界で存在感を増す中国人
前々回に触れましたように、曽て鄧小平が“韬光养晦”と言って、国民に実力を蓄えるまでは目立たぬように謙虚に振舞えといった時代を最近では卒業しています。政治、経済、学問、スポーツなど広く中国の存在感が増しています。政治の世界では一昨年の第19回共産党大会以来、習近平主席の強力な体制が築かれ、米国の自国主義に連れて中国の世界での発言権が益々目立っています。多額の貿易赤字が切っ掛けですが、世界での中国の存在感の高まりが昨今の米中貿易戦争の背景にあります。
その象徴的な仕掛けは前述の“一帯一路”構想でしょう。100以上の国家の協力を取り付け、正に世界でのリーダーの面目躍如といったところです。一頃と違い米国にはこうした大掛かりな仕組みを構想する国力も指導力も弱まった様に見えます。正に昇る陽と沈む陽を思わせます。
 |
写真1.真珠の首飾りのような『一帯一路』構想 |
経済においては、ネット販売大手のアリババのニューヨーク株式市場上場をはじめ、欧米を中心にした企業買収が盛んで、中国の存在感が目立ちます。急激に中国資本が先進国に流れ込んでいるため、現地での摩擦も生んでいるようです。特に、高度技術買収が絡んでいる場合は、当事国は警戒を強めています。曽て日本がバブル経済の時に米国企業の“爆買”に走ってアメリカ人に恐怖を感じさせた時代を彷彿とさせます。日本の時はあくまでも個別企業の判断で海外企業買収をした末に、バブル経済が崩壊して殆ど撤退しました。それに比べ、中国の場合は国家資本主義的要素が強く、欧米の資本主義と仕組みが違うため日本の場合とは違う警戒感が生まれています。
学問の世界でも留学生の数で世界一を誇っていることは既に触れましたが、論文数、論文引用件数、特許件数、博士号取得者数などで世界一を狙う勢いです。また結果として海外での大学教授の数でも諸外国を凌いでいます。昨今の米中摩擦から、米国は中国からの留学生数の制限をする動きにありますが。
25年ほど前にニューヨークに駐在している時、多くの州の田舎町に出張しましたが、日本食店はないのに中華料理店は何処にでもあるのに驚きました。われわれ日本人は疲れた時は何と言っても日本食か中華料理です。どんな米国の田舎に行っても中華店があるということはそこに力強く生き抜いている中国人が住んでいるということで逞しいなと思ったものです。こう言った風景は世界のいたるところに見られますから、世界の華人ネットワークは母国中国の下支えになっています。世界の世論形成する上でも大きな力でしょう。
最近中国は“一帯一路”構想と相まって、アジア、アフリカ、中東諸国のインフラ支援に積極的に乗り出しています。資金提供、工事の設計・施工、労働力提供とあらゆる面から関与しています。日本も同様な支援をして来ましたが、労働力までは提供したケースは希でした。こうした中国の労働力提供は一過性のモノでなく、工事終了後もその国に留まるケースが多く家族を同伴して現地での長期居住を前提にしているようです。この事は現地でトラブルを生んでもいますが。
 |
写真2.ナイジェリアのラゴスで中国が開発する鉄道・港湾事業 |
この頃スポーツ界で国際試合が益々多くなっていますが、中国人が外国に帰化してその国から出場する選手が増えています。中国の代表的スポーツで卓球がありますが、中国には強い選手が多過ぎて難しく出場権を得るために米国、豪州、カナダなどに帰化して出場しています。日本にも中国系の卓球選手もいることは良く知られています。スケートなどでもそう言った現象が見られます。
こうして見ますと中国及び中国人の存在は世界のあらゆる分野で大きな広がりを見せています。この中国人のエネルギーとネットワークが中国のみを利することなく、世界の経済発展並びに平和維持に貢献することを祈りたいと思います。
 |
写真3 今年5月の世界卓球選手権では中国人同士で男子決勝 |