はじめに
前回この欄に同じタイトルで投稿させていただいてから8年が経過いたしました。その間も定期的に中国訪問を続けていますので、最近の中国事情をここでお伝えできればと思います。
日本にとって中国は政治面でも経済・文化面などからも大変重要で有るにもかかわらず、日本人は中国に対して益々嫌中あるいは無関心になっている感じがします。それが何よりの証拠に、中国の町や観光地を歩いていても日本人観光客にほとんど会うことが無くなりました。
皆さんもご承知のように、このところ訪日中国人旅行客は、爆買いでも知られるように激増しています。日本の高品質の商品、文化、清潔さ、日本人の礼儀正しさなど中国人にとっては憧れの国になっています。日本人もマスコミ情報に振り回されることなく、自分の目で真の中国を判断できるようになって欲しいと思います。
現在私は上海の復旦大学に籍を置いているため、折に触れ中国に行って中国の現実を肌身で感じています。そうして感じている情報を本稿を通じ何回かにわたりご紹介していきたいと思います。
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<写真1:三井化学/新上海事務所からの市街>
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I.中国人の今日この頃
1.すれ違う両国民の思い
まず初めに日本人と中国人の思いがすれ違っている現実を見てみましょう。
2017年末の日中共同の世論調査では、中国人が日本に好印象を持つ割合が前年より10%上がり、31.5%になっています。これに対し、日本人の中国に対する好印象割合は前年より3%上がったとは言えわずかに11.5%に留まっています。
背景としては、多くの中国人旅行客が日本を訪れ人、モノ、文化に触れ好印象をもったことにあります。中国人は個人主義の国ですから、政府やマスコミの言うことより自分の目で見たことを信じる国民性なのです。元々中国人にとって日本は先進国でもあり憧れの国であったのに加え、ビザなどの環境も改善されて行きやすくなったことが旅行客激増の背景にあります。特に、今まで嫌日だった人が日本を訪れてから帰国後、急に日本の良いことを言い始めると周りへの好影響は大変大きなものがあるようです。
しかし、日本人は中国人と違い直接相手や相手の文化に触れることが少ない昨今の事情から好印象も低位に留まっていると思います。この背景には、中国との領土問題、軍事力の拡大、世界での存在感の増大などがあるでしょう。更に、深層心理の中に2010年にGDP世界のNo2.の座を中国に奪われたころから、日本人の心理の中に経済力で抜かれてしまったという挫折感が芽生えはじめたかもしれません。元々『中国なんて』と上から目線で見ていたものが、中国の経済力の発展によりある種の嫉妬心やら得体のしれない恐怖心までも生まれ始めているのかもしれません。しかし、日中は引っ越しのできない隣人である訳で、お互い解り合い仲良くやって行くしか存続の道はありません。どの国でも良い所悪い所があります。できるだけ相手の美点を凝視するとお互いの見方が変わるものです。
私のこの十数年の上海生活での体験では、中国の大都市、北京でも上海、深圳でも、そこに身を置いてみるとそこの活気に圧倒されます。それと同時に、70歳を過ぎた我が老骨でもエネルギーを注入されたように身がシャンとする気がします。是非最近の中国を自分の目で直接見て独自の中国観を持たれることをお勧めします。
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<写真2:上海の古い町並み> |